焦点:政治分裂に経済危機、エジプト革命2年も祝賀ムードなく

焦点:政治分裂に経済危機、エジプト革命2年も祝賀ムードなく
1月24日、エジプトでは独裁支配を続けたムバラク前大統領に対する抗議デモの発生から25日で2年を迎える。タハリール広場で撮影(2013年 ロイター/Mohamed Abd El Ghany)
[カイロ 24日 ロイター] エジプトでは、独裁支配を続けたムバラク前大統領に対する抗議デモの発生から25日で2年を迎える。しかし同国は現在経済危機に直面し、政治は分裂状態に陥っている。前大統領は退陣したが、25日にはさらなる抗議デモが予定されている。自由選挙で選ばれたモルシ大統領に対するデモだ。
モルシ大統領の反対勢力は、大統領と大統領の出身母体のイスラム組織「ムスリム同胞団」が、2年前の革命で掲げられた目的に背いたと批判、革命の中心地となったカイロのタハリール広場で25日に抗議デモを計画している。
2年前にソーシャルメディアを活用してデモを計画した「4月6日運動」のアハマド・マーヘル氏は、「(1月25日を)祝うべき日とはみていない。この日は同胞団に対し、他の勢力が存在するということを示す新たな革命の波を起こす日になる」と述べた。
同胞団側は25日にタハリール広場に支持者を向かわせない方針を示している。議会選挙が控えていることもあり、同胞団は25日に合わせ、貧困層の国民を支援する活動を予定。学校の改修工事、植樹、医薬品の提供、チャリティー・マーケットの開催を行うという。
チュニジアのベンアリ政権に対する抗議デモに触発され始まったエジプトの革命は、リビアやシリアの反政府デモの発生にも影響を与えた。同胞団はエジプトでは長年非合法となっていたが、革命を経て政権を掌握した。
革命から2年が経過したものの、エジプトは新大統領の選出時から続いている政治的混乱が引き起こした深刻な経済危機に直面している。ムバラク政権の崩壊という、エジプト国民を統一した目的意識は、現在では衝突に取って代わってしまった。世俗派やリベラル派は同胞団が国を支配しようとしていると批判。一方イスラム勢力は、反対勢力が民主主義を尊重していないと反論している。
欧州外交評議会(ECFR)のイライジャ・ザルワン氏は「大規模なデモが多く発生し、市民の暴動も起こると予想する」とし、「(革命から)2年が経過した現在、エジプトには幻滅した雰囲気が漂っている」と述べた。
<革命に「値しない」憲法>
国民投票で承認された新憲法だが、25日に抗議デモを計画している左派やリベラル政党にとっては大きな不満の一つになっている。「4月6日運動」のマーヘル氏は「この憲法は革命を起こすに値しないものだ」と非難した。
反対派は、新憲法が人権保護の面で不十分な内容であるほか、大統領に多くの特権を与えているなどと批判している。
一方、大統領の支持者は批判内容が公平さを欠いていると指摘。情勢安定を図るために迅速な新憲法の制定は不可欠だったとし、反対勢力は抗議活動を続けることで状況を悪化させていると強調した。
モルシ政権にとって、政治の分裂は経済問題への対処をより困難にさせている。大統領は昨年末、国際通貨基金(IMF)との間で成立した融資の原則合意を実施するための政策実行を延期した。
同胞団は、2年前の革命の目的の多くが現在も達成されていないことを認識した上で、新憲法の制定や初の民間出身の大統領の選出など、これまでに大きな達成はなされてきたとみている。
同胞団系の「自由公正党」 のスポークスマンは、国民には「日々の生活の生計を立てるということが重要で、彼らはエジプトの革命によってもたらされた変化を感じたいと考えている」とコメント。野党は要求内容を政策に表すことが必要だと述べた。
(原文執筆:Tom Perry記者、翻訳:本田ももこ、編集:野村宏之)

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